ストーリーstory
「彼女を愛してるさ、
だから殺してみたいんだよ」
弓子は、江戸川乱歩の愛読者。生前の乱歩が吐いた「僕は殺人快楽症になりたい」という言葉を巡り、彼が実際に人を殺しているという話がネット上で蔓延しているのを目にする。しかも殺したのは女。美しい女。乱歩はその女を、今も表参道に片鱗を残す、同潤会アパートの壁に埋め込んだという……。
祖父の写真館のアルバムから出てきた古い写真。写る美しい女、文子。彼と江戸川乱歩との接点が紐解かれ始める。弓子はまるで熱に浮かされたようにこの話にのめり込み、乱歩の親族、ひいては明智小五郎のモデルとなった人物、そしてそのすぐ傍にいた謎の美女までたどり着く。やがて弓子の前に、乱歩の幻影が現れ、彼女に囁くようになる。
乱歩「浅草の劇場の娘、芙蓉。分かるかね?
彼女、ハルピンの出身で天涯孤独なんだ。親兄弟はいない。踊り子仲間からは孤立していて、何度も失踪事件を起こしている。今、突然いなくなっても、みんな誰も不思議がらない。(薄く笑い)彼女を愛してるさ、だから殺してみたいんだよ」
ついに弓子は夢遊病者のように、ノミを手に入れ、たった一人で真夜中の同潤会アパートへと向かう。壁に刃を突き立てる。ボロボロと崩れる壁の破片の中からわずかに見えた着物の―…!
弓子「まさか、…本当に…」
「最初に本を読んだときと、2回目に読んだときとで、自分の中で全く異なる感覚を覚えました。
その後、監督とお話しをして、監督が作りたいと望むモノの面白さに共感し、何故自分の中で読むに連れて新しい見え方が生まれるのか、納得がいきました。そして、島田先生が描く世界観を、このチームで再現したいと強く思いました。
作品中にも出てくる、江戸川乱歩の蟲。とても狂気的なお話ではありますが、私は人間という生き物の持つ、紙一重の性質のリアルさに引き込まれ、主人公、弓子が抱く疑念にも、大変共感出来ました。この役を頂けて、本当に嬉しかったです。
文学を愛する皆さまに楽しんで頂ければ幸いですし、この作品が文学への新たな一歩となるきっかけになれば、更に嬉しく思います。」